このヘット・アンケル醸造所には2001年11月に訪問してきました。とてもアットホームな醸造所でヴァン・ブリーダム一族5代目で現社長のシャルル・レクリー氏自ら、歴史や醸造についての話しを聞かせてくれました。
この醸造所の歴史は古く、1369年にはメッヘレン市の税金の登録に既に記載されています。1471年には病院の記録に残されています。ベギン会の病院に寄付したため税金を免除するとの記録です。当時は水を介して伝染病が広がったため、ビールは安全な飲み物として病院とは密接な関係にあったようです。
1960年からはこの醸造所のレギュラーアイテム「ガウデン・カロルス」をリリースし、ベルギー国内や海外でも成功を収めました。当時としては、有名なモルトガット醸造所の「デュベル」とともに、ベルギーで最初のスペシャリティビールとしての一歩を歩み始めたのですが、ヘット・アンケルは途中でつまづいてしまったのです。当時の経営者はそれ以上の投資ができなかったからだとレクリー社長は言います。
その後経営難に陥ったこの醸造所はリヴァ醸造所と提携、1993年までその関係は続きました。そして1994年〜98年にはジョン・マルティン醸造所と提携、現在は独立してレクリー社長以下3名のみのスタッフで運営されています。
その3人のうちの一人、ルーヴァン大学醸造学科を卒業した若きブルワー、ハンス・ヴァン・レモールトル氏が醸造所内を案内してくれました。一見物静かに見えますが、内にはビール醸造に対する情熱とパワーにあふれたガッツマンです。
3人のスタッフは次々に新しいものをつくりだします。まず醸造所内に近所の人も気軽に立ち寄れるようなカフェを造り、次に古い倉庫をホテルに生まれ変わらせました。このホテルは22の部屋があり、名前を「Carolus(カロルス)」といいます。
この醸造所にはベルギー唯一というものが3つもあります。そのひとつがこの醸造所内の宿泊施設です。次回訪れる時はぜひ泊まりたいと思っています。
2つ目の唯一はホップです。ここではベルギー産、厳密に言うとホップ産地であるポプリンゲのものしか使っていないということです。
そして最後が本でも読んで知っていた屋上の冷却槽です。冷却槽に蓋は無く12本の柱によって屋根が取り付けられており、ランビック醸造所のように麦汁は空気にじかに触れることになります。もちろんここで私はハンス氏に聞いてみました。「発酵にたいするワイルドイーストの影響はないのですか?」。
すると答えは意外でした。「この冷却槽は10年前まで使用していたもので現在では使っていないんだよ。使用していた当時でも煮沸後60℃までの冷却に使われていただけなので、ワイルドイーストの入る可能性は無い」との事。本での疑問がやっと晴れました。
それからこの冷却槽のある屋上からは素晴らしいメッヘレンの街が一望できます。
現在の商品アイテムは唯一の下面発酵タイプの"Blusser"(火消しという意味)、これはカフェでのみ飲むことができます。そして後はすべて上面発酵タイプ。
"Triple Toison d'Or(トワゾン・ドール)""Mechelschen
Bruynen(メッヘルセン・ブライネン)"そして日本にも輸入されている"Gouden
Carolus(ガウデン・カロルス)""Gouden
Carolus 'Cuvee van de Keizer'(ガウデン・カロルス・キュヴェ・ヴァン・ド・ケイゼル)"があります。
レクリー社長はこれからも小規模の製造、伝統的な製法でビール造りを続けていきたいとおっしゃっていました。若いパワーあふれる今後も大注目のアルティザナールな生産者です。(この醸造所についてさらに詳しくは若旦那のベルギー訪問記で。。。)