醸造所訪問記
2023.08.25
新しいレッド・ビール醸造所 ザ・ブリュー・ソサエティ(SOSAB)初輸入
このたび、新しいレッド・ビール醸造所 ザ・ブリュー・ソサエティ(SOSAB)から初めて輸入を開始することになりました。
2020年からレッド・ビール造りに挑戦している、まだ新しい醸造所です。
今年の3月にベルギーに行った際、さっそく訪問してきました。
醸造所は、西フランデレン州のコルトレイクに位置しています。
同じくレッドビールのドゥシャス・デ・ブルゴーニュで知られる、ヴェルハーゲ醸造所から車で20分ほどのところにあります。
ザ・ブリュー・ソサエティは、2016年に設立された新しい醸造所。
当初はプライベート・ブランド専門でしたが、2019年から独自のビールの醸造をスタート。
現在は、Martha, Seven Sins, そしてSour Alesと、さまざまなブランドを持っています。
そのうち、SOSAB(Science Of Sour Ale Brewing)では、2021年から西フランデレン州伝統のレッドビールを醸造しています。
レッドビール醸造は趣味的な位置づけ、と言っていましたが、かなり広い敷地で本格的に造られていました。
ジュネヴァやコニャックの樽。
奥にはベルギー限定の、ウィスキーやバーボン樽を使用したものも。
社長のヴィヨルンさん。
とても陽気で話し好き。情熱たっぷりの人です。
最後にティスティングをしながらの商談。
レッドビールを含め、全部で6種類のビールを試しました。
今回は、サワービールのみ、3種類輸入することになりました。
オーク樽で12ヶ月熟成させたビールとブラウンエールをブレンドしています。
Ⅻは、ローマ数字で「12」という意味です。
赤みがかった、透き通ったブラウン。
酢のような酸味を感じさせる香り、ブラックベリー、パッションフルーツ、プラム、りんごのようなフルーティーな香り、カラメルのような香りも感じられます。
口に含むと、乳酸を思わせるさわやかな酸味が広がります。
サワーチェリーやベリーの風味を感じさせるフルーティーな味わい。
後味はすっきりしていて口の中が引き締まります。
このビールは、ワールド・ビア・アワード2023において、ワールド・ベスト・フランダース・レッドエールに選ばれ、さらに最高の栄誉である、ワールド・ベスト・サワー&ワイルドビアに選ばれました。
オーク樽で20ヶ月熟成させた、ブロンドエール。
XXは、ローマ数字で「20」という意味です。
ややオレンジがかった、透き通ったアンバー。
泡立ち、泡持ちともにとても良い。
白ぶどう、レモン、りんご、プラム、洋梨、白桃のようなフルーティーな香り、オーク、バニラ、キャラメルのような甘さを思わせる香りも感じられます。
口に含むと、りんごや白ぶどうを思わせるフルーティーな酸味が広がります。
やがて、オークやバニラのような風味も現れます。
とてもなめらかでふくよかな味わい。
後にフルーティーな酸味が長く続きます。
このビールは、ワールド・ビア・アワード2023において、ワールド・ベスト・サワー&ワイルドエール部門で金賞を受賞しました。
エヒテ クリークは、本物のチェリービールという意味。
Ⅸは、ローマ数字で「9」という意味です。
現在では希少な存在となっている、スカールベーク種のチェリーを使用、木製の樽で9ヶ月間浸漬しています。
透き通った、鮮やかなルビーレッド。
チェリー、ラズベリー、いちごのようなフルーティーな香り、酢のような酸味を感じさせる香り、バニラやアーモンド、ナッツのような香りも感じられます。
口に含むと、チェリーのさわやかな酸味、甘み、渋みがバランスよく広がります。
とてもフルーティーでジューシーな味わい。
このビールは、ワールド・ビア・アワード2023において、ワールド・ベスト・クリーク部門で銅賞を受賞しました。
各商品の説明にも書きましたが、2023年8月24日発表された、ワールド・ビア・アワード2023において、今回輸入した3種類のビールすべてが受賞したとのうれしい知らせが届きました!
ワールド・ビア・アワード(WBA)年に1回開催されている、ビールの世界的コンペティションです。
10個のカテゴリーに設けられたスタイル毎に、Round 1、Round 2の審査が行われ、Round 3の最終審査で各カテゴリーのベストビールが選出されます。
Round 1では各国の代表を決めます。各カテゴリーに設けられたスタイルごとに各国のスタイルの代表「カントリーウィナー」が選出されます。
その後、Round 2で各国の「カントリーウィナー」を獲得したビールをスタイルごとに審査し、「ワールドベスト・スタイル」が選ばれます。
最後のRound 3ではこの「ワールドベスト・スタイル」同士を各カテゴリー内で審査し、最終的に10カテゴリーにおける「ワールドベスト・ビール」が決定します。
今回、XX ペール・グランクリュ が、ワールド・ベスト・サワー&ワイルドエール部門で金賞を受賞!(ワールドベスト・ビール)
Ⅻ フレミッシュ・レッドエール が、ワールド・ベスト・フランダース・レッドエールに選ばれ、さらに最高の栄誉である、ワールド・ベスト・サワー&ワイルドビアに選ばれました。(ワールドベスト・スタイル)
そして、Ⅸエヒテ・クリークも、ワールド・ベスト・クリーク部門で銅賞を受賞しています。(カントリーウィナー)
ぜひお試しください!
醸造所訪問記2023.08.12
新しいランビック醸造所 ケステモント初輸入
このたび、新しいランビック醸造所 ケステモントから初めて輸入を開始することになりました。
2010年代後半から次々に誕生しているランビック醸造所、そしてブレンダーですが、このケステモントもそのうちの一つです。
今年の3月にベルギーに行った際、さっそく訪問してきました。
醸造所がある、ディルベークは、ランビック醸造所が集まる地域にあります。
リンデマンス醸造所から車で5分ほどの場所です。
徒歩圏内に、デ・ネーヴ、エイレンボッシュなど、かつて操業していたランビック醸造所がありました。
ケステモント醸造所は、もともと1968年まで操業していたランビック醸造所、グーセンス醸造所の場所にあります。
2016年にこの土地と建物をケステモント家が購入しました。
ケステモント家はもともとグーセンス醸造所の近くで暮らしていて、現在のオーナー兼ブルワーはランビックの醸造所を間近に見ながら育ちました。
2019年から、Den Herbergの原酒を使ってブレンダーとしてスタート。
2021年3月から自社での仕込みを開始し、最初のランビックが木樽に入れられ熟成が始まりました。
2022年9月から最初のビールを販売開始しました。
中庭に設置されたクールシップ。
仕込み室。
ランビックの醸造、樽熟成、ブレンドは18世紀に建てられた古い納屋の中で行われます。
現在、1階にはデン・ヘルベルグのランビック、2階には2022年12月に導入された樽が設置されています。
1968年まで操業していたランビック醸造所、グーセンス醸造所の跡。
博物館にする計画があるとのこと。
オーナー兼ブルワーのリアス・ケステモント氏(右)と父フランシスは、オーナー兼CEOのウィム・クリーケマンス(中央)と醸造所を共同所有しています。
リアスとウィムは義理の兄弟でもあります。
※リアスさんはものすごいイケメンでした。
ウィムさんとフルーツ。
醸造所では自社でほとんどのフルーツを栽培して、ランビックに使っています。
ホップはポプリンゲ産のものを使用しています。
造られる製品はセルティシス(旧エコセール・ベルギー)認定を受けています。
写真の4つのマークのうち、一番右。
※セルティシス
ベルギーの有機製品認証機関のひとつで、EUの基準に基づいて認証を行っている。
認証を受けるためには、最低3年間、化学肥料、除草剤、農薬を使用しないことはもちろん、土壌検査や保管場所のほか、多くの厳しい基準を満たす必要がある。
また毎年1回査察を受ける義務があり、それに合格した製品だけがセルティシスのマークを表示することができる。
可愛らしいラベルは版画で印刷したものをスキャンして作られています。
今回は、写真の3種類をティスティングさせてもらいました。
グーズは今年の夏以降に出来上がる、ということで、年末までには輸入する予定です。
詳しいことはまたその際に。
夏からは見学コースも設置されるとのこと。
次回はツアーで訪れてみたいです。
そして、これが今回唯一輸入できた、ケステモント・オード クリーク スカールベーク 375ml。
以前は醸造所のあたりで広く栽培されていましたが、現在では希少な存在となっている、スカールベーク種のチェリーを使用したクリークです。
ケステモント醸造所では、自社の畑で有機栽培したものを100%使用しています。(今後、3~5年ほどかけて、さらに300本を植える予定にしています。)
このランビックには、1リットルあたり400グラムのスカールベーク種チェリーを使用しています。
醸造所では通常フルーツを漬け込む際、ステンレスタンクを使用していますが、このスカールベークだけは木樽に漬け込んでいます。
木樽由来の素朴な風味を感じていただけると思います。
オレンジがかった、ややにごりのある濃いめのルビーレッド。
チェリー、ブラックベリーのような赤い果実の香り、桜餅の葉のような香り、バニラやアーモンドのような香りも感じられます。
口に含むと、チェリーのフレーバーをともなった、生き生きとした酸味が広がります。
とてもシンプルで、ほのかな甘味、塩味も感じられるバランス良い味わい。
あとで舌の上で心地よい渋みが続きます。
ぜひお試しください!
醸造所訪問記2023.05.25
リーフマンス醸造所のマダム・ローザ死去
ベルギービールの世界で大切な人が亡くなりました。
5月16日(火)、リーフマンス醸造所の元取締役で、ベルギー最初の女性ブルーマスターとして知られるローザ・メルクス氏(98歳)が自宅で亡くなりました。
1946年に秘書として働き始め、1950年からブルーマスターとなり、有名なリーフマンス・グーデンバンドの醸造にも携わりました。
1972年、醸造所オーナーの死後、彼女はリーフマンス醸造所の経営を引き継ぎました。
その後、経営を離れたものの、2008年にデュベル・モルトガット社に引き継がれた後、再びリーフマンス醸造所に戻りました。
リーフマンスのラベル(写真)には、彼女の長年の功績を讃えて、シルエットが描かれています。
また、グーデンバンドなど、すべての紙巻き包装には彼女のサインが記されています。
彼女はリーフマンス醸造所のすぐそばに住んでおり、しょっちゅう醸造所に顔を出し、ティスティングを欠かさなかったそうです。
写真は2014年にローザ・メルクスさんのご自宅を訪ねたときのものです。
この時はたまたま買い物に出られていて、残念ながらお会いすることができませんでした。
お元気なうちに会いに行きたかったのですが、それが叶わず残念です。
ご冥福をお祈りします。
リーフマンス醸造所
https://www.belgianbeer.co.jp/ct/brewery/liefmans/
Rosa Merckx (98), former director of the Liefmans brewery and first brewmaster in Belgium, has passed away
https://www.nieuwsblad.be/cnt/dmf20230517_93898173
2023.03.10
2日目:カンティヨン醸造所
ヘルシンキを経由して、10:00頃ブリュッセル到着。
ホテルに着いて、アーリーチェックインをお願いするも、冷たく断られる。仕方がない。
長旅で疲れているし、外は嵐のような雨なのでどうしようか迷ったが、自分を奮い立たせて出かけることに。
スーツケースを預け、カメラと財布だけ持って外へ出た。
目的はカンティヨン醸造所。
ホテルの最寄駅からメトロで3駅ほどなので、さっそく最寄り駅へ行くと、なぜか閉鎖されている。
おかしいなぁ、と思いながら、ひとまず次の駅まで歩く。
すると、その駅も閉鎖されている。
なぜ閉鎖されているのかもわからず、もう一つ先のGare de Midi(ブリュッセル南駅)まで歩くことにした。
Gare de Midiは、国際駅にもなっている大きな駅なので、何かわかるだろうと思ったのだ。
予想通り、ここにきてようやく事情がわかった。
よりによってこの日は全面ストライキが行われており、メトロは全線運行停止になっていたのだ。
仕方がないので暴風雨の中、さらに1駅分歩いてカンティヨン醸造所に向かった。
カンティヨン醸造所。
前回、当店も参加したズワンズデー直前で訪問したので、3年半ぶりとなる。
事前にアポイントの連絡を入れていたが、社長のジャンさんは今日ベルリンに出張に出ていて留守とのこと。
いつものように一人で見学を始めたが、醸造所はひっそりとして見学者もほとんどいなかった。
こんなカンティヨン醸造所を見るのも初めてかもしれない。
好きなだけ写真を撮ったりしながらゆっくり周った。
最後にバーに行くと、意外にも多くのお客さんで賑わっていた。
まず、1杯目は見学者用のランビック。
その後、限定品の”Grenache Noir 2021”と”LDH2019”を注文。
”Grenache Noir 2021”は、鮮やかなルビーレッド。
まさにグルナッシュの風味があり、きいちごなどベリー感もたっぷり。
酸味は控えめで複雑さもないが、とても美味しく飲めた。
”LDH2019”は、Lambic d’Haute Densiteの略で、そのな名の通りアルコール度数がとても高く、9%ある。
にごりのある、黒みがかったガーネット。
バターのような甘い香り、シェリーやマディラのような味わい。
長旅の疲れもあるのか途中まで飲んでかなり酔いが回ってしまい、全部飲めるかなぁ、と考えていたところ、向いの席に座っていた若いカップルが声を掛けてきた。
昨年の”Zwanze2022”を大瓶で頼んだが、2人で飲みきれないので一緒にどうですか?とのこと。
ちょっと迷ったが、ボトルでは飲んだことがなかったので、お言葉に甘えて1杯いただくことに。樽詰めよりもゴリラペッパーの風味を強く感じた。
2人はアメリカから観光でやって来たカップルだった。
ティスティングしながらメモを録ったりしていたので、よほどのマニアかと思われたみたい。
ベルギービールを日本に輸入しているんだ、という話をすると、さっそくベルギービールJapanやBEER BOUTIQUE KIYAのSNSを検索して、良いお店だね!とお褒めの言葉をいただいた。
そうしていると、ジャンさんの妹でマネージャーのマガリーさんがわざわざ探しに来てくれた。いろいろお礼を伝えて、そろそろ帰ることに。
外に出るとまだ冷たい雨が降っていて風も強い。
いちおうGare de Midiまで行ってみたが、やはりメトロは動いていなかった。
あきらめてホテルまで歩くことにした。
ホテルに着いたのは17時近くだったのですぐにチェックイン。
荷物を整理して、近くのデレーズで買い物をし、ようやくシャワーを浴びて一息ついた。
2023.03.09
1日目:「北回り」航路でブリュッセルへ
2019年9月以来、約3年半ぶりのベルギー。
初めての夜発のフライトということもあり、なんとベルギーの到着日を勘違いするというミスがあったが、直前に気がついてなんとか便を変更。
今回は羽田空港経由だったが、欧州に向かう便が多いのかラウンジも混雑している。
食事は以前のように自由に取ってくるのではなく、オーダーを入れて、並んで受け取るシステムに変わっていた。
コロナを経ていろいろ変わっているようだ。
23:50 離陸。行きはJAL便。
ロシア・ウクライナ情勢の影響で、日本出発後、アラスカやグリーンランドの上空を経てヨーロッパに向かうため、約13時間と以前より4時間ほど余計にかかる。
2018.07.24
Lupulus(ルプルス)まとめ
ルプルス醸造所にて。
左から、ピエール、三輪、ジュリアン。
ルプルス醸造所のルーツは、アシュフ醸造所にあります。
アシュフ醸造所は1982年、ピエール・ゴブロン(Pierre Gobron)<左>、クリス・ボウラルツ(Chris Bauweraerts)<右>の2名によってスタート。
最初は趣味的な醸造所でした。
これは当時ビールを仕込んだとされる洗濯桶。
現在はアシュフ醸造所内に展示されています。
現在のアシュフ醸造所。
2006年9月より、親戚筋だったデュベル・モルトガット社の傘下に入りました。
一方、ルプルス醸造所はリエージュから南へ車で1時間ほどの、ボヴィニーという町にあります。
ボヴィニーはルクセンブルグ、そしてドイツとの国境とも近い場所に位置しています。
18世紀からある大きな農場の中に建てられ、純粋で新鮮な水を使っています。
ルプルス醸造所は、もともとアシュフ醸造所のカフェ用マイクロブルワリーとして2004年にスタート。
当時は1ヶ月に1klずつ、年間12klのみ醸造を行っていました。
2007年に単独の醸造所として独立。
現在は、アシュフ醸造所の共同創業者の一人である、ピエール・ゴブロン氏と息子のジュリアン氏親子を中心に運営されています。
メインの銘柄、ルプルスにはこんな物語があります。
かつて醸造所がある地域にはオオカミが住んでいました。
彼らはホップで有名なスロベニアから来たと伝えられています。
ホップの毬花はオオカミの顔の形に似ていることから、ラテン語で「Small Humble Wolf」を意味する「Humulus Lupulus」という学名が付けられました。
そのためここで造られるビールにはその名にちなんだ「ルプルス」、ラベルには「オオカミ」が使われているのです。
2017年にはトロワ・フールケ(Trois Fourquets)醸造所からルプルス(Lupulus)醸造所に社名が変更されました。
トロワ・フールケとは、フランス語で3つの(醸造用)フォークという意味です。
Zythos Bier Festivalにて(2007年3月3日)
2007年当時、トロワ・フールケ醸造所の情報を知った私は、毎年参加していたZythos Bier Festivalでさっそく醸造所にアプローチしました。
その時ブースに座っていたのはアシュフ醸造所のクリスさん。
当時は醸造所を売却した直後で、トロワ・フールケ醸造所も手伝っていたのでしょう。
しかしまだ時期が早すぎたのか、諸般の事情で取引に至ることはありませんでした。
(当時はまだルプルスという銘柄もなかったはず)
ずっとそのことは忘れずにいたのですが、それから7~8年経ったある日ベルギー滞在中にルプルスを飲む機会があり、またかつての思いがよみがえってきました。
そして2016年2月に醸造所初訪問。
写真は醸造所の中庭。左が旧醸造所、右が試飲スペース、事務所。
写真は旧醸造所内部。かなり手狭な印象です。
この頃ちょうど新しい醸造所を建設中でした。
ピエール氏の息子ジュリアン氏と初めてのティスティング。
同年6月に再訪。
新しい設備が出来上がっていました!
ボトリング設備ほか。
前とは比べ物にならないくらいものすごい広さです。
2016年現在、新しい醸造所設備を拡張しており、キャパシティは仕込みが8,000kl、発酵が3,000klとなります。
日本にも輸入しているキーケグ。
まだキャパに余裕があるので、他醸造所のビールの樽詰め、瓶詰めも行っています。
2017年にはルプルス・バーもオープンしました。
ルプルスはその名前の通り、ホップの特徴を生かしたビール作りをしています。
ただ、フラットな酵母に特徴あるホップを加えるという作り方ではなく、酵母からの味わいと特徴あるホップとの調和を考える、という作り方を大切に考える醸造所です。
ここのところ新しいアイテムにも次々に挑戦しているルプルス。
これからが楽しみです。
醸造所訪問記
2018.06.22
Geuzestekerij De Cam(デ カム)まとめ
De Cam(デ カム)のカレル・ゴドー氏(Karel Goddeau)と初めて会ったのは、2007年3月のこと。
スラッグムルダー醸造所にて(2007.3.5)
カレルさんは、当時弊社が取引していたWitkapで知られるSlaghmuylder(スラッグムルダー)醸造所の醸造責任者でした。
初めて訪問した際、身振り手振りを交えながら熱心に醸造所内を案内してもらったことをよく覚えています。
実は最初はそんな縁から、デ カムの日本への輸入がスタートしました。
デ・カムは、Gooik(ゴイック)という小さな村にあります。
1700年代、ドゥゴティニという醸造士がここで醸造を開始したと伝えられています。
そのときの醸造所のマーク「3つのハンマー」がGooikのシンボルにもなっており、村の中心にもハンマーのオブジェがあります。
デ カムは1997年にウィレム・ヴァン・ヘルウェーゲン(Willem Van Herreweghen)氏によって立ち上げられたブレンダーです。
ブレンダーとは、複数のランビック醸造所から麦汁を購入し、自らの設備でブレンドしたり、サワーチェリーを漬け込んだりして製品化する生産者のこと。
デ カムとは、昔のオランダ語で農家、醸造所を意味しています。
デ カムにて(2010.7.27)※ここでも「3つのハンマー」見つけられますか?
2002年からデ カムはカレルさんに委ねられました。
彼は15年以上もの間、平日はスラッグムルダーで働いたあとの夜1時間程度、そして週末にデ カムで働いていました。
この頃は午後8時に寝て、午前1時に起きて仕事をするという毎日で、なんと1日14時間も仕事をしていたそうです。
2018年1月、スラッグムルダー醸造所を退職し、現在はデ カム専業となっています。
ブレンドに使うランビックは、ブーン、ジラルダン、リンデマンス、ドゥリー・フォンティネンの各醸造所から。
使用している樽は、チェコのピルスナー・ウルケルで1800年〜1995年にかけて使われていたもので、もともと40klだったものを解体、組み立てなおし、1klの樽(50本)として使用しています。
他に、フルーツ・ランビック用に2,500リットルのステンレスタンクが4本あります。
6〜7ヶ月熟成させたランビック1,500リットルに1,000キロのクリークを漬け込み、1年間熟成させます。
木の樽で行うとクリークを取り除けなくなってしまうという理由でステンレスタンクを使用しています。
カレルさんが吹いているのは、1400〜1500年代のゴーイックの伝統的な楽器、「ドゥーデル・ザック」。
ブリューゲルの絵にも登場しているそうです。
これまでにも何度かカレルさんの演奏を聴かせてもらいました。
「ストゥンプル」というステンレス製の道具。
80年〜100年ほど前のもので、今はなかなかお目にかかることができません。
このストゥンプルは、お店でランビックを提供する際、角砂糖を入れてそれを砕くために使っていました。
飲み手が味を調節しながら飲んでいたのですね。
ストゥンプルといえば、ベルギーでは「ランビック・ストゥンプルス」という愛好家のグループがあり、毎年8月末にはランビックのお祭りを開催しているそうです。
カレルさんの自宅にてティスティング(2015.11.19)
弊社では2013年の初め頃まで細々ながら輸入を続けていたのですが、さまざまな事情によりそれ以降ストップしていました。
その間にデ カムの評価はどんどん上がっていき、少量生産ということもあってベルギー国内でも入手困難な銘柄になりました。
以前、ベールセルにある「De Lambiek」というランビックに関するビジターセンターに行った際、「デ カムを日本に輸入しています。」と話すと、担当者に、「デ カムはベルギーでも手に入らないんだよ。よく輸入できたね!」と驚かれたことがあります。
カレルさんはよくこう言います。
「トラピストビールを始めとするベルギービールは約3週間でできる。私の造るランビックはその52倍の時間と労力をかけてでき上がる。もっとリスペクトされるべきだ。」と。
自分の作り出す製品にものすごいプライドを持っています。
JBPAベルギーツアー2018で訪問(2018.2.7)
2018年2月には、一般財団法人 日本ベルギービール・プロフェッショナル協会のベルギーツアーで訪問。
滞在中にもカレルさんとミーティングを行い、この度約5年ぶりに輸入再開することになりました!
ぜひこの機会にデ カムの素晴らしい味わいをお試しください。
今回輸入するのは、オード・ランビックとオード・グーズの2種類です。
デ・カム オード・ランビック
3年樽発酵のストレート・ランビック。
オレンジに近い、透き通った明るいアンバー。泡はほとんどありません。
グレープフルーツ、レモンのような柑橘系の香り、すももや白桃、青りんごのようなフルーツの香り、樽からの新木のような香り、ヴァニラのようなほのかに甘みを思わせる香りもあります。
グレープフルーツのようなフレーバーをともなった、丸みを帯びた上品でなめらかな酸味が感じられます。
後にレモンやグレープフルーツのような心地よい渋みが長く続きます。
デ・カム オード・グーズ
1,2,3年ものをブレンドしています。
オレンジがかった、ややにごりのあるゴールド。とても泡持ちが良い。
レモンのような柑橘類の香り、白ぶどう、白桃、アプリコットのようなフルーツの香り、パッションフルーツやマンゴーなど甘みを感じさせるトロピカルフルーツのような香りもあります。
口に含むと、レモンやグレープフルーツのようなフレーバーを伴った、生き生きとした酸味を感じます。
あとにグレープフルーツの内果皮のような心地よい苦味が続きます。
醸造所訪問記
2018.02.07
De Cam(デ カム) 2018.2.7.
2018.02.06
Lupulus(ルプルス) 2018.2.6.
2016.08.15
ANCHOR BREWING(アンカー・ブルーイング)訪問
先週までアメリカ カリフォルニアに滞在していたのですが、最終日の2016年8月15日に当店でも昔から取り扱いのある、アンカー・ブルーイングを訪問してきました。
当初まったく計画になかったのですが、「そういえばカリフォルニアといえばアンカーがあった!」と思い出し、急遽iPhoneで検索。
一日2回のブルワリーツアーを実施していることを知り、さっそくそのまま予約。
クレジットカードでの決済で簡単に予約完了です。
ツアーはもともと無料だったそうですが、連絡なしのキャンセル等が多いため、現在は有料となっています。
1時間30分のツアーで一人20ドル。
ティスティングに参加はできませんが、子どもも参加可能です。
醸造所は、サンフランシスコ、ダウンタウン中心部ユニオンスクエア付近からバスに乗って30分ほど南に行ったところにあります。
しかしバスは定刻通り来ない上に途中渋滞で遅れたため、到着はツアー開始の10時ギリギリになってしまいました。
なぜか確認メールも削除してしまっていたので、ちゃんと入れてもらえるかな?と心配しましたが、受付で名前を言うとしっかり予約されていました。
急いでツアーがスタートする2階のティスティングルームへ。
10時を10分くらい過ぎても全然始まる気配はありません。笑
そしてなんとツアーが始まる前にウェルカムドリンクが!
中身はアンカー・スチームでした。
ティスティングできる人はブルーのリストバンド。
未成年、ドライバーはグリーンのリストバンドです。
当たり前ですが参加者のほとんどがアメリカ人で総勢20名ほど。
写真左奥の場所にはショップがあり、ビールの他、Tシャツ、パーカー、栓抜きなどのアンカーグッズを販売しています。
ウェルカムドリンクを飲みながら、まずはアンカー・ブルーイングの歴史についてレクチャー。
最近のクラフトビールの勢いを意識してか、アンカーはアメリカで最初、かつ、もっとも歴史が古いクラフトビールの醸造所である、ということを強調していました。
30分くらい経ったところでいよいよ醸造所内の見学です。
まずは仕込み室。
ステンレスタンクを想像していたので意外でした。
発酵タンク。
なんと浅くて広い、開放式の発酵タンク。
サンフランシスコの涼しい空気によって冷却されるのです、と説明がありました。(隣のスペースにはプレートクーラーもありました)
ホップ室。
さまざまなタイプのホップが展示されています。
ここではホップペレットは使用していないそうです。
もちろんエクストラクトも。
地下におりて熟成タンク。
どんなビールを仕込んでいるのかな?
興味津々です。
こちらは1階にある瓶詰ライン。
ベルギービールの醸造所では、よく「瓶詰ラインのロールスロイス」と説明される、クローネス社の設備でした。
こちらは缶ビールの目視チェック。
30分ほどの見学を終え、ティスティングルームに戻ります。
いよいよお待ちかねのティスティング。
こんな大きさのグラスにビールを注いでもらいます。
この日ティスティングしたのは、ウェルカムドリンクを含めて6種類。
・Anchor Steam Beer
この醸造所のフラッグシップ。
・Anchor Mango Wheat
ほのかにマンゴーのフレーバーを感じるウィートビール。
喉の渇きを癒すのに最適。日本未輸入。
・Anchor Dry-Hopped Steam Beer
アンカー・スチームのドライ・ホッピングバージョン。
まもなく日本にも入ってくる予定です。
・Odeprot IPA
これだけは何かわかりませんでしたが、美味しかったのは間違いないです。
・Anchor Porter
こちらは昔からあるアイテム。ポーター。
・Flying Cloud San Francisco Stout
最後に来たのはスタウト。
2015年から新たに追加された3種類のラインナップのひとつです。
まともに飲んでいると結構酔っ払います。
このあとは案の定トイレに行きっぱなしの状態になりました。
特に終了のアナウンスはなく、飲んでいたい人はゆっくり、という感じ。
構成は、
・ウェルカムドリンクを飲みながら醸造所の歴史等についてのレクチャー(30分)
・醸造所内見学(30分)
・5種類のティスティング(30分)
こんな感じです。
これで2,000円程度ならすごくお得だと思います。
かつては無料だったなんて。。
サンフランシスコに行く機会があればぜひ行ってみてくださいね。
◯VISIT ANCHOR
http://www.anchorbrewing.com/brewery/tours
・・・
この日、かつてお世話になった方が亡くなったことを知りました。
奇しくもアメリカのビール醸造所で。
いろんなことがありましたが、なぜか一番印象に残っているのはビール関係のことではないんですよね。
それは15年くらい前、ベルギーから帰国して伊丹空港からそのまま二人で夙川のステーキ屋さんに行った時のこと。
優しい顔で娘さんの話をしておられたことを覚えています。
いただいたステーキと、おみやげで持ち帰ったカレー、最高でした。
そんなことを思い出しつつ、献杯させていただきました。
今までお疲れさまでした。
そしてありがとうございました。