2004.11.19
2日目:ブリュッセル~カンティヨン醸造所
二日目の朝、7時ごろ快調に目覚めて朝食。
8時ごろには現地在住の栗田さんとホテルで合流。
「三輪さんは5回目なのでご存知だと思うけど。初めての方がいらっしゃるから。」
ということでブリュッセル市内観光。
私もこれまでビール関連のところ以外はほとんど目に入らないような旅をしてきたので、新鮮に感じることができた。
ノートルダム・デュ・サブロン教会
ホテルのあるグラン・サブロン広場からすぐのところにある、ノートルダム・デュ・サブロン教会。
ステンドグラスがとても美しい。夜だったらさぞかし素晴らしいだろうな、と思った。
徒歩で王宮、王立美術館、楽器博物館など見学した後、シュ・ド・バル広場へ。
ぜひ蚤の市を見てみたかったのだが、さいわい毎日やっているそうで見ることができた。
とくに土日は出店者も多く、大きな市が開かれているようだ。
ベルギービールのグラスがあれば、絵画や、置物などガラクタみたいなものがいっぱい。
広場の周りには骨董店があり、この広場で仕入れたものをきれいにしては高く販売しているそうだ。
ジュ・ド・バル広場の蚤の市
その後グランプラスへ移動。
まだ朝なので飲食店へ配達をするトラックなども出入りしている。
しかし素晴らしい天気にうれしくなってくる。
市庁舎(グランプラス)
まずはビール博物館にもなっているBB(Brasseurs Belges=ベルギー醸造業者組合)の本部へ。ここで輸出入関係の理事をされているブラバンテル氏が出迎えてくれた。
ここは17世紀からビール醸造業者のギルドとして使われてきたが、現在でも本部として使っているのはこのBBだけ。
例によって古い醸造器具などの見学をした後、奥にある現代の醸造設備を見学。
博物館併設のバーでビールの注ぎ方をレクチャーしてもらったあと、特別にBBの会議で使われているという会議室に入れてもらった。今でもここで毎月会議が開かれているそうだ。
窓から見るグランプラスの景色も素晴らしい。これはとても貴重な体験だった。
※BBの便所でさっそくデジカメ落下!カメラは何ともなくて一安心。ここから帰るまでずっと首からデジカメをさげることになった。(笑)
BBの会議室
グランプラスを南西方向へ、セルクラースの像、小便小僧、土産物屋などを見ながら徒歩で今日の昼食をとる「スピネコプケ」(オランダ語でくもの巣)へ。
ここは一度行ってみたかった店。オーナーはビールを使った料理の本も出している。
スピネコプケ
まずはオススメの”Apperitif “In’T Spinnekopke” Creme de Cerises et Bieres Blanche ”という店特製の食前酒をいただく。
ホワイトビール(Steendonck・・・日本未輸入ですがデュベル・モルトガット醸造所のホワイトビールです)、チェリーのリキュール(Griotte)を使ったもの。バランスがよく、なかなかの味わいだった。
そして楽しみなビール料理。
せっかくなので4人で4種類の料理を頼んでそれぞれ味見してみることにした。
うさぎ、おん鳥、ほろほろ鳥、サーモンの料理を注文、皆でいろいろ味わった。
素材が初体験なのはもちろんだが、ソースも思いも寄らない味わいだった。
ありがたいことにすべての料理をおいしく味わうことができた。
私が注文したビールは初めて見たカンティヨンのファロ。
出てくるとグラスに注がれてきたビールは真っ黒でギネスみたい。
味わってみると、あ、甘い!正直言って全部飲み干すのにかなり体力を要した。
お腹いっぱいになった後にデザート。クリーク、マレッツ、ブロンシュを使ったシャーベット。
また特製の食後酒(ビール、グレープフルーツ、ミントの葉を使ったもの?)を最後に飲んだ。
カンティヨン・ファロ(スピネコプケ)
そしてタクシーに乗っていよいよカンティヨン醸造所へ。
ここも2年半ぶり、また外壁がきれいになったような気がする。
中に入るといつもと変わらない景色と匂いがあった。
カンティヨン醸造所
ジャン・ピエール・ヴァン・ロワさん、 そして現在では当主となった息子のジョンさん、娘のマガリーさん、ジュリーさん皆さん勢ぞろいで、忙しそうに見学客たちの相手をしていた。
この日もアメリカ、イギリスなど各国から見学者がたくさん来ていた。
今回で3度目となるカンティヨン醸造所だったが、今回はヴァン・ロワさん自ら醸造所内を案内してくれた。(1回目訪問記)(2回目訪問記)
(細かい醸造行程はここでは書かずに、気になったことや興味を引かれたお話だけを書きたいと思います)
通路をまっすぐ奥へ進むと、これまでになかった新しい設備があった。
これは蒸気で湯を造るためのステンレスの設備で今年設置されたそうだ。
残念ながら仕込みは2週間後から始まるとの事で見ることはできなかった。
新しい設備
屋根裏へ上がり、ホップ倉庫でヴァン・ロワさんにいろいろお話を伺った。
昼食でファロを飲んだことを話すと、「あそこのファロはおいしくなかっただろう?」とヴァン・ロワさん。お店で独自に甘みをつけているため、ヴァン・ロワさんいわく本物のファロとはいえないよ、とのことだった。「今度行くときは前もって言ってくれ」と言って笑っていた。
話をするヴァン・ロワさん
ファロ話のついでにこんな話も聞かせてくれた。
ヴァン・ロワさんは輸出できるファロを研究中との事。原料はもちろんバイオのもの。
ファロの中には糖分がたくさんあるため瓶が爆発してしまう、などの危険性があるためなかなか瓶で飲めるものではないのだが、ベルゴシュークルという特別な砂糖を使うと発酵が止まり、爆発しないようにできるそうだ。ヴァン・ロワさんの飽くなき挑戦に感心させられた。
次に冷却槽へ。
ここも以前とは変わっていたところがあった。床がエンジ色に塗り替えられている。
さきほどの新しい設備、床の塗り替え、屋根の修理等、これらはすべてEUの法律に沿ったものだということだった。額面どおりに受け入れた場合、煙突もステンレスに変えたり、もちろん冷却槽も使えなくなってしまうので、ランビックは造れなくなってしまう。
塗り替えられた冷却槽部屋の床
こうした改修は新しい法律の上でランビックを作り続けていくためのぎりぎりの落としどころといえる。でも伝統的なビール醸造を守っていかなければならない、とヴァン・ロワさん。
前回改修されていて心配だった屋根についても、生態系が変わってしまった時のために当時の古い瓦も全部保管してあるそうだ。
伝統のビール醸造を守りつつEUの法律も守らなければならないヴァン・ロワ一家の苦労を思い知らされた。
次に樽貯蔵室へ。
ここも床を全部コンクリートをはるそうだ。その前に樽を移動させなければならないので大変な作業だ。コンクリートの上には床用のレンガを敷くとの事。
ここでは5~7日間栓を空けたままにしておく。
最初の発酵は約2週間続き、糖分は75%が消化される。残りの25%は3年もの年月をかけて天然酵母が食べていくことになる。
400リットルの樽の中身は3年後には280リットルになる。
樽貯蔵室
奥に進むとろ過の行程。
ここではろ過に使うろ紙までも作っている。
セルロースを溶かしろ紙を作ってフィルターにセットする。
セルロースを溶かす機械
下に下りるところに新しい部屋ができていた。
ビジターセンターとして展示会など行う場所らしい。
年に2回開催しているパブリック・ブリューイング・セッションの時などに使われるのだろう。
奥にあるのがビジターセンター
そして1階の試飲スペースへ。
例によってヴァン・ロワさんが醸造所特製のランビックを次々に持ってきてくれた。
静かにランビックを注ぐヴァン・ロワさん
■キュベ・ルペペのスペシャル・クリーク
スカールベーク種のクリークのみを使用したクリーク。2002年物のランビックに150kg.のスカールベーク種クリークを漬け込んで2ヶ月経ったもの。
輝きのある濃いルビー色、香り、味わい、後味ともに素晴らしいものだった。
■キュベ・ルペペのスペシャル・フランボワーズ
-2℃で送られてきたハンガリー産のきいちご(生のもののみ)を使用したフランボワーズ。2002年物のランビックに150kg.のハンガリー産きいちごを漬け込んで2ヶ月経ったもの。
■93,94年に仕込んだものを96年に瓶詰めしたグーズ
今回の中では最高においしかった!
■’83 カンティヨン・グランクリュ
白ワインの熟成香のような感じ。ヴァン・ロワさんいわく、ジュラ地方のシャルドネのフレーヴァーがあり、もうちょっと前のほうが状態がよかったね、との事。
時間もなくなってきたのでお楽しみの買い物。
珍しいコースターのセットがあったのでそれを買おうとすると、「あげるよ、それからこれも。」とヴァン・ロワさん。歴代のラベルがセットになった素晴らしく貴重なものまで私たちに一人ずつくれた。
そこでマガリーさんが一言。
「お父さんは良い経営者とは言えないわね!だって何でもあげちゃうんだもの!」
これには一同大爆笑だった。
最後に、当店のウェブサイトの表紙写真は8年前にヴァン・ロワさんと撮ったものだが、よく写真が若すぎるといわれるのでまた一緒に写真をとってください、と話すと、「じゃあ、現在の私とまた撮ろう」と快く承諾していただき、ひさしぶりのツーショットが実現した。
ヴァン・ロワさんと8年ぶりにツーショット
最後にヴァン・ロワ一家4人にお礼を言って醸造所を出た。
アルコールも回っていたのでいったんホテルで休憩。
その後ホテル周辺にある、ピエール・マルコリーニ、ヴィッタメールといった有名チョコレート店でお土産購入という大変な仕事を早々とやっつけた。
徒歩でビアカフェの見学。
他の方は行ったことが無いというモール・シュビトなどの有名なカフェを回ったり、ジャンネケ・ピス(小便少女)前の話題のデリリュウム・カフェなどを見学。なかでも有名なア・ラ・ベカッセに腰を落ち着けた。ここはベルギーに来て初めて入ったカフェ。中はまったく変わっておらずとても懐かしかった。もちろんランビック・ドゥーを飲んだ。
ア・ラ・ベカッセ店内
その後グランプラスに戻り、インターブルー直営のカフェへ。
ここでインターブルー社のアジア担当ジェック氏や世界各国から集まったベルギービールを扱う人たちと初めて合流した。
しかしこの夜は本当に寒く、いちおうヒューガルデン・ホワイトを頼んだが震えながら飲むことになった。
夜のグランプラス
そして午後9時ごろ、今日の夕食をとる”Chez Vincent”へ。
時間的にものすごい賑わい。とても人気のあるレストランだそうだ。
この店で有名だというステーキ、ベルギービール、ワインなど楽しんで、ホテルに帰ったのは午前0時くらいになっていた。
このパターンが毎日続くとはこのときは思いもしなかった。(笑)