2008.03.24
5日目:コントレラス醸造所
■コントレラス醸造所へ
午前7時起床。
ゆったり朝食をとって9時前にOさんと合流。
比較的天気が良いが、昨夜の雪でところどころ雪が積もっていた。
今日の予定はコントレラス醸造所のみ。
普通はイースターで休みの会社が多いのだが、ここは家族だけで経営している小さな醸造所のため、休みも関係ないということで訪問させてもらうことに。
アールスト、ゲントを経由して醸造所に到着したのは約束のちょうど5分前。
さすがOさん!
出迎えてくれたのは現社長のフレデリック氏。
2回目の訪問となる今回は事務所に通してもらった。
コントレラス醸造所は東フランドル州のGavere(ガーヴレ)という村にある。
このあたりは「フランダースのアルデンヌ」と呼ばれる起伏に富んだ地形で伝統的なフランダースの村である。
醸造所の創業は1818年。
当初は典型的な醸造農家で、夏は農業を営み、冬にはビールを醸造していた。
もともと醸造所を所有していたのはレット家だったが、1898年にゲント近郊に醸造所を所有していたコントレラス家のルネ・コントレラスに売却。
第一次世界大戦前後にはゲント近郊の醸造所は廃業し、現在のコントレラスのみとなった。
第二次世界大戦後、ピルスナーを発売すると大人気となり、4代目のマルセルはさまざまな設備投資を行った。
当時は村にあった60軒ほどのバーに卸していたが、だんだんバーの軒数が少なくなるにつれてビールの販売量も減っていったため、消費者向けに瓶内二次発酵タイプの新しいビールを開発していくことになった。
1957年、5代目のウィリーは醸造学校で醸造を学び、1982年にマルセルが亡くなると、後を継いでさらに醸造所を発展させていった。
2000年からはウィリーの娘アンの夫であるフレデリックが醸造所で働き始め、2005年には正式に6代目の当主となった。
現在ではピルスナーのほかに、上面発酵タイプのトンネケ、ヴァレールといったシリーズがあり、年間生産量は250klと小規模ながら秀逸な味わいのビールを造り続けている。
約50年前から使用している仕込釜。
現在仕込みは1週間に1回。
こちらは2機ある煮沸釜。
仕込みの際に使うお湯はここで前夜に温められる。
麦汁は再びここに戻って1時間~1時間半煮沸される。
ここでは多くの醸造所で使われなくなった昔ながらの冷却機を今なお使用している。
この冷却機のパイプは縦に大きく3層に分かれており、その中に水や氷をそれぞれ入れることで最終的な温度を調整しているのだ。
上面発酵タイプの場合は上から2層のパイプに地下水を入れ、最終的に22℃まで冷却、下面発酵タイプの場合は、さらに3層目のパイプに氷を入れ、最終的に14℃まで冷却される。
次に1階の醗酵室へ。
こちらは下面発酵タイプの発酵タンク。
12℃で約1週間発酵が続く。
こちらは上面発酵タイプの発酵タンク。
22℃~25℃で4日間発酵が続く。
この後、熟成室でそれぞれ熟成された後、瓶詰め。
1時間に約3000~4000本の瓶詰めを行うことができる。
現社長のフレデリック氏。
話を終えて外に出るとものすごい吹雪!
「イースターに雪が降るなんて初めての経験だよ!」
とコントレラス親子。
その後Oさんと、コントレラスの銘柄のひとつ、Valeirの物語を追っていくことに。
Valeir(ヴァレ-ル)は2004年にリリースされたコントレラス醸造所では新しい銘柄。
この名前がつけられたのには2つの理由がある。
一つは、もともと醸造所を所有していたレット家の創業者の名前が、”Valeir Latte”という名前だったこと。
そしてもう一つは、1453年まで続いた百年戦争で活躍したこの村出身の戦士の名前が”Valeir”だったこと。
なんと醸造所から近い公園にその戦士の像があるという話を聞き、さっそく行ってみることに。
これがあるからベルギービールの楽しみは尽きない。
村の中心の広場にその像は建っていた。
近寄ってみると威圧感たっぷりの佇まい。
像の足元に文字が彫ってあった。
しばらくして広場を立ち去ろうとしたとき、今度は壁に描かれた不思議な絵を発見。
じつはこれもコントレラス醸造所のビールの物語の一端を担っていた。
毎年フランダースではどこかの村や町で自転車のレースが開催されている。
1960年にはこの村の出身者がレースで優勝し、その人は「ELTORO」というあだ名で呼ばれていた。
2007年にはここGavereでそのレースが行われたため、それを記念して「ELTORO」というビールが仕込まれた。 (現在は別の名前で販売されている)
その後ホテルまで送ってもらい、食事のため外へ出ようとしたがものすごい吹雪。
たまに晴天になったりもするが、またすぐに吹雪になるという不安定な天気。
仕方がないのでホテル1階にある、カフェでパスタとヒューガルデンを。
夜はさっそくサンプルでもらったValeir Blondを試飲。
ドライホッピングを行っているという、秀逸な味わいだった。